産まれたときの体重と同じ重さとしたテディベア
5年前に結婚式を挙げました。私の両親は遠方から来るため、飛行機への乗車の際でもかさばらないものがいいと考えていました。ドライフラワーのような壊れやすいものは、飛行機に乗せる際も、運送を使う際も、無事な補償は無いと思いました。
嫁との相談の結果、ウェイトベアを渡そう言うことに決まりました。ウェイトベアとは、産まれたときの体重と同じ重さとしたテディベアです。ネット通販などでは簡単に手に入る商品です。自分で手作りするものから、オーダーで刺繍を入れられるものから、色々な種類があります。私たちは、結婚式と披露宴の準備もあるため、少し値段が高かったですが、オーダー品としました。
結婚式当日、田舎から遥々来た両親は都会の波の中をなんとか結婚式場までたどり着き、すでにヘトヘトでした。常に無口な親父は都会の空気に慣れず、二年ぶりに息子に逢うのに到着時点でとても不機嫌そうでした。
結婚式も披露宴も滞りなく進み、新婦から両親への挨拶、感謝のプレゼント贈呈へと進みました。嫁である新婦からの両親への挨拶は感謝に満ちた素晴らしい挨拶でした。そんな感動の絶頂の時登場したウェイトベア。やってくれたのは親父でした。ぬいぐるみを渡した瞬間、親父は新婦の両親よりも大泣きしてしまいました。私はこんなに泣く親父を初めて見ました。農家の長男坊として産まれてきたにもかかわらず、半ば家出同然で故郷を出て、エンジニアとしてやってきたので、親父とは見えない溝があったのだと思います。そんな親父がスポットライトを浴びながらぬいぐるみを持って大泣きする姿は、少し滑稽でありながら私までもらい泣きするありさまでした。
その後、涙目の母から「男二人があんなとこで泣いて、はんかくさい」と言われながら、飛行機で帰っていきました。たまに実家に帰ると、埃に被らないぬいぐるみが大切そうに親父の部屋に飾ってあります。